東京三菱銀行との闘い


チットブックなどの筆跡鑑定

(平成8年4月19日)


甲第33号証「報告書」

チットブックなどの筆跡鑑定

総合法律事務所 関西中央 弁護士 上原茂行


1.鑑定書T

(1)質権設定承諾依頼書と念書の「出町、平成、7」は同一筆跡。

(2)念書とチットブックの「預、7、2」は同一筆跡。

(3)名刺3枚の裏面とチットブックの「預、金、崇」は同一筆跡と窺える。

(4)当直日誌とチットブックの「桂正起」は同一筆跡。

(5)チットブック12枚目の「おくさま」と11枚目の「不要につき入金」は、同一筆跡と窺える。

2.鑑定書U

 普通預金明細頁、支出などに関するメモ書き、普通預金印鑑届の「西村、井尻」は同一筆跡と窺える。

3.鑑定書V、W

 地産あて約束手形3通の記載文字は一致するが、チェックライターによる刻印状況は原本を見ないと確断できない。

4.鑑定書X

 約束手形(額面2億円)4通、定期預金証書裏面署名と堀和幸あて手紙の「藤井轍雄」は異なる筆者によるものである。 以上


鑑定書

 先に依頼のあった文書(筆跡)の鑑定については、実体顕微鏡を使用して綿密に検査・対照すると共に、更に詳細な検討を加えたうえ後述のごとく鑑定し、この鑑定書を作成した。

1.鑑定資料

 示された鑑定資料は次のとおりであるが、鑑定説明その他の便宜上から、各頭書のごとく符号をつけた。

資料1.普通預金明細書をコピーしたもの 2枚

同 2.支出等に関するメモ書きのコピー 1枚

同 3.普通預金印鑑届をコピーしたもの 1枚

2.鑑定事項

 資料1に記載の「西村・井尻」筆跡と、資料2、同3に記載の「西村・井尻」筆跡とは、同一筆者によるものであるかどうか。

3.鑑定結果

 資料1に記載の「西村・井尻」筆跡と、資料2、同3に記載の「西村・井尻」筆跡とは、同一筆者によるものであると推定される。

4.鑑定理由

(1)はじめに…

 この鑑定書の本文ならびに添付写真の説明文中、かっこ(「 」)を設けて字画や文字の一部分を朱書きしたもの、あるいは添付の筆跡写真に朱線・朱矢印等をつけたものは、その説明において指摘の字画や文字の一部分を分かり易くするために、特に表示したものである。

(2)資料の概見

 資料1は、添付の写真第一、第二号に示すとおり、普通預金通帳の昭和63年6月30日から平成元年4月17日までの支払い等の明細頁をコピーしたもので、昭和63年10月11日欄および平成元年4月12日欄に記載の「井尻」、「西村」の筆跡が、この資料において指示された筆跡である。これらの筆跡を詳細に観察するに、複写資料であるため筆具や筆圧等の検査はできず、複写状況にやや不鮮明なところはあるが、通筆の渋滞等による不自然な字画線の震えなどは指摘されない。

 資料2は、添付の写真第三号に示すごとく、支出金額等をメモ書きしたもののコピーで、ここに記載の筆跡を詳細に観察するに、全般に比較的筆早に筆記された状況であり、不自然なたどたどしい書きぶり等は発見されない。

 資料3は、普通預金印鑑等の届出用紙3枚を一括コピーしたもので、その様式等は、別添写真第四号に示すとおりである。この資料において指示された筆跡とは、一番上に複写されている「西村幸子」分の届出用紙であり、ここに記載の筆跡を詳細に観察するに、複写状況にやや不鮮明なところはあるが、の全般に比較的ていねいに筆記されており、疑問となる字画線の震え等は生じていない。

(3)対照・検討等の経過等

 資料がいずれも複写資料であるため、筆圧等については検査できないなど、異・同識別に困難性を生じるところはあるが、各資料の筆跡を綿密に対照・検討するに、

〔1〕資料1と資料2の「井尻」字において…

 添付の写真第五、第六号に説明のとおり「井」字第四画「井」や「尻」字第一画「尻」の形態に相違がある反面、「井」字第三画「井」を第一、第二画「井」にはめ込む縦線とし、「尻」字第五画後筆部「尻」を大きく左下に書き始めるなどの運筆・筆跡は一致しており、また、資料2の末尾に記載の「計」字第六、第七画「計」を横平たく書くのは、資料1の「尻」字第一、第二画と、第九画「計」を右へふくらませるのは、資料1の「井」字第四画と同じであるなどを参照すると、異なる筆者によると認め得る相違は、指摘できないこととなる。

〔2〕資料1と資料3の「西村」字において…

 添付の写真第七、第八号に示すとおり、横線字画の傾斜等に相違するところはあるが、「西」字に対して「村」字を目立って小さく書く要領や「村」字の筆跡形態は一致しており、特に「西」字第二、第V画「西」を殊更横平たく書く筆癖の一致は、同一筆者による可能性が高いと判断した、大きな根拠である。

以上を総合して、鑑定結果欄のごとく結論した。以上

平成8年4月8日/鑑定者 馬路鑑定科学研究所 文書鑑定人 馬路充英


鑑定書

 先に依頼のあった文書(筆跡)の鑑定については、実体顕微鏡を使用して綿密に検査・対照すると共に、更に詳細な検討を加えたうえ後述のごとく鑑定し、この鑑定書を作成した。

1.鑑定資料

 示された鑑定資料は次に掲記のとおりであるが、鑑定説明その他の便宜上から、各頭書のごとく符号をつけた。

資料1.「約束手形」4通をコピーしたもの 1枚

同 2.自由金利定期預金証書の裏面のコピー 1枚

同 3.弁護士 堀和幸氏宛封筒 1通

同 4.同 右   1通



2.鑑定事項

 資料1、同2に記載の「藤井鐡雄」氏名筆跡と、資料3、同4に記載の「藤井鉄雄」氏名筆跡とは、同一筆者によるものであるかどうか。

3.鑑定結果

 資料1、同2に記載の「藤井鐡雄」氏名筆跡と、資料3、同4に記載の「藤井鉄雄」氏名筆跡とは、異なる筆者によるものと認められる。

4.鑑定理由

(1)はじめに…

 この鑑定書の本文ならびに添付写真の説明文中、かっこ(「 」)を設けて字画や文字の一部分を朱書きしたもの、あるいは添付の筆跡写真に朱線・朱矢印等をつけたものは、その説明において指摘の字画や文字の一部分を分かり易くするために、特に表示したものである。

(2)資料の概見

 資料1は、添付の写真第一、第二号に示すとおり、振出人 藤井鐡雄名義の「約束手形」4通をコピーしたもので、ここに記載の「藤井鐡雄」氏名筆跡を詳細に観察するに、複写資料であるため筆具や筆圧等の検査はできず、複写状況に不鮮明なところもあるが、運筆の逡巡や渋滞による不自然な字画線の震えなど、偽造を窺わせるような痕跡は見受けられない。

 資料2は、添付の写真第三号に示すごとく、自由金利型定期預金証書の裏面をコピーしたもので、おなまえ欄に記載の「藤井鐡雄」氏名筆跡が、この資料において指示された筆跡である。この氏名筆跡を詳細に観察するに、資料一と同様、筆具や筆圧等については検査できず、「雄」と印影が重合しているため、「雄」字の字画線の識別に困難なところもあるが、不自然な字画線の震えやなぞり書き等は発見されない。

資料3、4は、添付の写真第四ないし第七号に示すとおり、いずれも弁護士 堀和幸氏宛の白色封筒であり、黒色インキの水性ペンを使用して、宛先・差出人住所・氏名が記載されている。これらの筆跡を観察するに、全般に筆早に筆記されており、疑問となる運筆の逡巡等は見受けられない。

(3)対照・検討の経過等

 資料1、同2が複写資料であるため筆圧等の検査はできず、資料1、同2が横書きであるに対し資料3が縦書きであるため、配字形態については検討できないなど、異・同識別に困難性を生じるところはあるが、各資料の筆跡を綿密に対照・検討するに、添付の写真第八ないし第三五号に記述・説明のとおり、特に筆癖等の一致が指摘されない反面、資料1、同2の「藤」字第一七、第一八画「藤」を筆記速度に関係なく横平たい「く」字形に書き、「井」字第四画「井」を右へふくらませ、「鐡」字第三画「鐡」を右下へ伸ばし、「雄」字第八画「雄」を長く書くのは資料3、同4に表現されないなど、運筆・字画構成等の相違が、随所に指摘される。

 以上を総合して、鑑定結果欄のごとく結論した。

平成8年4月9日/鑑定者 馬路鑑定科学研究所 文書鑑定人 馬路充英


鑑定書

 先に依頼のあった文書(筆跡)の鑑定については、当研究所大阪事務所ならびに奈良研究所において、実体顕微鏡を使用して綿密に検査・対照すると共に、更に詳細な検討を加えたうえ後述のごとく鑑定し、この鑑定書を作成した。



1.鑑定資料

 示された鑑定資料は次に掲記のとおりであるが、鑑定説明その他の便宜上から、各頭書のごとく符号をつけた。

資料1.質権設定依頼書 1通

同 2.念 書   1通

同 3.名刺3枚の裏面を一括コピーしたもの 1通

同 4.当直日誌  1通

同 5.チット・ブックと称するもののコピー 15枚

2.鑑定事項

(1)資料1と資料2において、同一人が記載したところがあるかどうか。

(2)資料2と資料5において、同一人が記載したところがあるかどうか。

(3)資料3と資料5において、同一人が記載したところがあるかどうか。

(4)資料4に記載の「桂正起」氏名筆跡と、資料5の6枚目に記載の「桂正起」氏名筆跡とは、同一筆者によるものであるかどうか。

(5)資料5の11枚目左下の「不要につき入金」と書いた筆者によるものが、資料5の他のところにあるかどうか。

3.鑑定結果

(1)資料1と資料2の「出町・平成・7」字などは、同一人が記載したものと認められる。

(2)資料2と資料5の「預・7・2」字などは、同一人が記載したものと認められる。

(3)資料3と資料5の「預・金・崇」字などに、同一人が記載したと認められるところがある。

(4)資料4に記載の「桂 正起」氏名筆跡と、資料5の6枚目に記載の「桂 正起」氏名筆跡とは、同一筆者によるものと推定される。

(5)資料5の12枚目左中央部の「おくさま」字は、資料5の11枚目左下の「不要につき入金」と書いた筆者による可能性が窺えるものである。

4.鑑定理由

(1)はじめに…

 この鑑定書の本文ならびに添付写真の説明文中、かっこ(「 」)を設けて字画や文字の一部分を朱書きしたもの、あるいは添付の筆跡写真に朱線・朱矢印等をつけたものは、その説明において指摘の字画や文字の一部分を分かり易くするために、特に表示したものである。

 ところで、われわれが記載する文字というのは、印刷文字などのように物理的に安定した条件のもとで作成されるものとは異なり、比較的自由に動く筆具を持った手先の運動によって筆記するため、いくら同一人が同一条件のもとで書いたとしても、全く同じ文字(極端に言えば、重ねるとぴったり重なり合う文字)は書けるものでなく、まして筆記時期や筆記姿勢、筆記時の精神状態等が異なると、字形等に変化が生じるのは、日常われわれが見たり、経験したりするところである。

 しかしながら、現在われわれが有している筆記技術というのは、幼少の頃よりの長期にわたる筆記経験を積み重ねて来て習得したものであり、この筆記経験の間には、各人それぞれに各人の精神的・肉体的好みにあった筆記要領等が生じ、それが次第に定着して習慣となり、記載した文字に筆癖となって表現されるに至るのである。

 このいったん定着した筆癖は、容易に消滅したり、変革できるものでなく、いくら筆記姿勢等の筆記条件が異なったとしても、記載した文字の随所に、筆者特有の筆記要領等が現出されているものである。

(2)資料の概見

 資料1は、添付の写真第一号に示すとおり、「質権設定承諾依頼書」と標題のついた文書をコピーしたもので、支店名など必要事項が記入されている。これらの筆跡を詳細に観察するに、資料が複写資料であるため筆具や筆圧等の検査はできないが、運筆の逡巡等による不自然な字画線の震えや書き足し等は発見されない。

 資料2は、添付の写真第二号に示すごとく、「念書」と標題の文書をコピーしたもので、複写状況にやや不鮮明なところはあるが、全般に比較的ていねいに筆記されており、作意の介在を窺わせるぎこちない書きぶり等も見られない。

 資料3は、添付の写真第三に示すとおり、預かり書として作成された名刺3枚の裏面を一括コピーしたもので、ここに記載の筆跡を詳細に観察するに、全般にやや筆早やに記載する筆記リズムはよくそろっており、不自然なたどたどしい書きぶり等も見受けられない。

 資料4は、添付の写真第四号に示すごとく「当直日誌」と標題の文書で、所属・氏名等に黒色インキのボールペンで記載の「桂 正起」氏名筆跡が、この資料において指示された筆跡である。この氏名筆跡を詳細に観察するに、横書き体形に比較的ていねいに筆記されており、不合理な書き足し等は指摘されない。

 資料5は、チットブックと称するもので、添付の写真第五ないし第一九号に示すとおり、15枚に亘って複写されている。これらに記載の筆跡を詳細に観察するに、疑問となる字画線の震えが生じた文字は発見されない。

(3)対照・検討の経過等

 資料1、同2、同3、同5は複写資料であるため、筆圧等の検査はできないが、筆記速度などを充分に考慮して、各資料の筆跡を綿密に対照・検討するに、

(1)資料1と資料2において…  添付の写真第二○ないし第三六号に記述・説明のとおり「出町」字や「通」字、「金」字、「預」字など、同一訓読文字における筆記特徴等は、一致するものである。

(2)資料2と資料5において…  添付の写真第三七ないし第五七号に説明のとおり、「預」字第三画「預」を横線一本に省略し、第四画「預」を左下へ丸く伸ばしてそのまま止筆し、第五、第六画「預」を丸く縦線字画形とし、「7」字第二筆前筆「7」止筆部から大きく筆を持ち上げて後筆部「7」を起筆し、「2」字を「ス」字形に書き、「5」字第一筆湾曲部「5」を上下に細長く伸ばすなどの筆癖に一致するところがある。

(3)資料3と資料5において… 添付の写真第五八ないし第七四号に記述・説明のとおり、資料3に指摘される「預」字第八画横線部「預」を右下へ伸ばしていったん筆を切り、改めて後筆部「預」を起筆するのは、資料5の「額・領・預」字「頁」字部にも表現されるなど、「崇仁」字や「金」字、「2」字などの筆癖等は一致するものである。

(4)資料4と資料5の「桂正起」筆跡において…  添付の写真第七五ないし第八二号に記述のとおり、筆跡全体から見た「正」字の大きさに相違があるほかは、資料5の「桂」第六画「桂」は第五画「桂」の右へ寄せて交差し、「起」字第二画「起」は第一画「起」の中央左寄りで交差するなど、資料それぞれの字画構成等の変化から考察すると、特に筆癖の創意が指摘されない反面、「桂」字第一画「桂」を長く伸ばし、「正」字第四画「正」止筆部から僅かに筆を持ち上げて第五画「正」へつなぎ、「起」字第一○画「起」を字形全体から見て右へはみ出すように大きく書くなど、筆記要領等の一致が随所に見受けられる。

(5)資料5の11枚目「不要につき…」の筆跡について…  資料5の11枚目の「き」第三、第四画「き」の筆記形態と全く同じものが、添付の写真第八三、第八四号に示すとおり、資料5の12枚目の「さ」字第二、第三画「さ」に現出している、などの対照的結果を得るものである。

 以上を総合して、鑑定結果欄のごとく結論した。以上

平成8年4月10日/鑑定者 馬路鑑定科学研究所 文書鑑定人 馬路充英