東京三菱銀行との闘い


国政オンブズマン「GОA」より

平成12年7月号


なぜマスコミは取り上げない?

東京三菱銀行による「156億円消失事件」

崇仁協議会が株主総会に大挙出席、そして流血、逮捕劇

 今や「丸の内名物」となった「崇仁協議会──消えた156億円の謎」はその後、東京三菱銀行側と崇仁協議会側との具体的な話し合いもないまま、今年も6月29日、東京三菱の株主総会を迎えた。その間、崇仁協議会は、東京・丸の内オフィス街の一角、東京三菱銀行本店前で「カネを返せ」「我々の預金156億円の使い道を明らかにせよ!」などの抗議運動や座り込みを継続して行ってきた。

 しかし、株主総会当日、一般紙などでも小さく報道されたように両者の間で思わぬハプニングが続出。だが、大手マスコミはこの156億の行方不明について全く触れていない。なぜ、これほどの大事件にマスコミ各社は沈黙したままなのか。事態はますます長期化、引き出された156億円の預金の謎も闇の中に葬られようとしている。

 この事件のそもそもの発端は、崇仁協議会名義で東京三菱銀行の京都・出町支店に預金してあった156億円もの大金が何者かによって引き出された、のが原因だ。

 なぜ156億円もの大金が預金者の知らぬ間に引き出されてしまったのか、といえば、それには「チットブック」という聞きなれない預金通帳ならぬ「預金引き出し帳」らしきモノを説明しなければならない。このチットブックは別名「手控え帳」ともいわれ、印鑑も通帳もなく、手書きのサインだけで預金を引き出すことが出来るという、常識では考えられない代物だ。156億円もの大金も、こうした手口で数回にわたって引き出されたのだと言う。このチットブックについて事の真意を確かめるため、東京三菱銀行に尋ねたが──。

「機械の自動支払機は別として、銀行業務で、通帳も印鑑も使わないで多額の払い戻しをすることは絶対にありません」(同行の本店業務企画部)と全面的に否定している。しかし、現にチットブックは存在し、これに基づいて出金の手続きを行っていたことは、平成10年の初めごろ明らかになっている。

 崇仁協議会の元会計職員と東京三菱銀行の元副支店長とが、この『チットブック』のみで、巨額の預金引き出しを実行していたのは、東京三菱銀行の重大な業務上の過失であるとし、崇仁協議会の第二代・代表委員長に就任した中口寛継氏らが会員とともに東京三菱銀行に交渉したが拒絶されたために、一昨年からバスをチャーターして京都から30人以上の会員と上京し、東京三菱銀行本店前で「金を返せ」「東京三菱銀行はドロボーだ」とシュプレヒコールを繰り返していた。(中略)

 崇仁協議会が請求する156億円は、東京三菱銀行は引き出し請求に基づいて金額を支払済みであると主張するが、その引き出し方には問題があった。崇仁協議会の前委員長・藤井鐡雄氏(別件で実刑判決を受け拘留中)と、その当時の一部職員が「会員不通知のまま勝手に引き出したもの」と、中口委員長らは東京三菱銀行と交渉していたが、その引き出し方には問題があった。

 そして今年の6月29日。東京三菱銀行の株主総会当日、東京三菱の個人株主である崇仁協議会のメンバー約30人が朝の8時半ごろ、株主総会に出席するため東京三菱の本店前に姿を現したところ、警視庁の警備隊や公安係官が取り囲む中で、東京三菱側の警備をする数十人と揉み合いになり、崇仁協議会の中口委員長が逮捕された。理由は、禁止地区立ち入り容疑だと言う。

 また、それを制止しようとした崇仁のメンバーの中から女性の悲鳴が上がり、その場に倒れてしまった。すぐに救急車が駆けつけ、その女性は東京・新橋の慈恵医大病院に運ばれたが、「全身打撲による全治2週間の入院・加療を要する」と診断された。

「流血の惨事」にまで発展した今年の東京三菱の株主総会。約1時間半と比較的時間は短かったものの、未だもって解決の糸口さえ掴めないこの「156億円消失事件」への質問が相次いだが、東京三菱銀行は「顧問弁護士に任せてあります」「『差別』というのは、あってはならないこと」と表向きの答えに終始し、誠意ある対応は殆ど見られないまま、総会は終了したという。

 総会に出席した崇仁協議会の川村会長は、総会後報道陣に囲まれ──、 「東京三菱はもちろんのこと、顧問弁護士を通しても、たった一度たりとも話し合いのテーブルに着こうとしない東京三菱銀行に怒りを感じる。この事件が解決せず、長期化すればするほど、当事者間で得することは何一つない」と語り、今後も東京三菱に対し、巨額預金の返還運動を続けていく考えを鮮明にした。

 これに対して東京三菱銀行側は「156億円もの大金が不正に引き出された、なんてことは絶対にありません」(同行本店広報部)

 しかし一体、誰が何の目的でこの大金を引き出したのか、東京三菱銀行はこの疑問に答える社会的義務がある。

新亜公論社 平成12年9月号より

真の解放を求めて

地域住民の意向を尊重して街づくりを

 日本三大部落地域と言われる京都市の崇仁地区で、ここ2〜3年来、断続的に放火事件が発生し、焼死者が出るなど住民に被害を及ぼす事態が続いているが同一地区内での連続放火事件でありながら、犯人は未だに検挙されていない。

 京都駅前の一等地、しかも8万6千坪という広大な崇仁地区だけに、再開発ともなれば巨大な利権が絡む。当然、放火事件についても様々な憶測が飛び交っている。

 現在、「同和特別地区」に指定されている同地区では、家屋の老朽化が進んでいる。しかし、立て替えはおろか民間に売買することもできない。行政による買い上げのみが許可され、京都市による改良住宅建設事業が始まろうとしている。

 住民たちは、この改良住宅建設事業について、再開発に名を借りた行政の地上げだと指摘する。同和地区の住民を市営住宅の中に囲い込むことで、地域住民との断絶が深まるとも危惧する。

 確かに、崇仁地区の一部のみが市営住宅の名を借りた同和地区となり、住民を追い出して獲得した広大な余剰地は、京都市の再開発事業として様々な利権を生む構図が成り立つ。そこで地域再生と共生の町づくりを目指して活動する住民組織「崇仁協議会」は、市の方針に明確な反対を打ち出したのである。

 前述した放火事件について、崇仁協議会の中口委員長は次のように指摘している。

 ── 夜陰から明け方にかけて発生しているのですが、面妖なことに20数件にも及ぶ放火事件だというのに、犯人が未だに検挙されていないことです。警察、消防、検察のいずれも、その伝統と実績からすれば当然に犯人検挙の実をあげてしかるべきものと考えるのが常識です。

 そのため、素朴な住民の中には、行政の放火ないしは放火教唆があるのではないかとので噂する人が増えつつあるという奇態まで呈しているのです。噂は噂として、ともかく行政は放火犯人の検挙に全力を挙げていただき、その犯意と背景が何なのかを明確にしていただきたい。

 機会があるごとに累々申し述べているのですが、同和地区住民の悲しむべき被差別と苦境を少しでも認識理解するならば、このような生活不安はあってはならないことですから、一日の猶予もない大問題なのです」──

 崇仁地区では年々人口が激減している。京都駅前という地の利の良い地区にもかかわらず、まるで過疎地域のようなゴーストタウンと化しつつあるのだ。この現象は、一にも二にも同和地区からの逃避現象である。同和差別を解消するための「同和特別地域」認定が、逆に差別を煽ってしまった。

「もはや同和差別は無くなったではないか」とか「同和地区住民のみが行政上配慮されて得をしている」といったような「逆差別」論が幅を利かせているが、これは実態を知らない者の憶測に過ぎない。崇仁地区に一歩足を踏み入れれば、同和地区として線引きされたラインの中と外は、まるで天と地ほどに風景が一変する。逆差別を振り回す人たちには、ぜひ一度崇仁地区を見ていただきたい。これが果たして、経済大国日本の一部なのかと目を疑うことは間違いないだろう。

 崇仁協議会では、独自の再開発構想を主張し、京都市の進める再開発構想に意義を唱えている。京都市の計画とは、新規住民が入りにくい状態にしておき、現住民の減少化を加速させ、いずれは同和地区を消滅させようというものであり、これに反して崇仁地区の住民たちは同和地区住民と新規住民との混在化を図り街に活気を取り戻し、京都駅前にふさわしい繁栄地をというものである。

 このように、地域住民の意向を無視した京都市のやり方は、どう考えても行政の横暴である。地域再開発を計画して進めていく以上、地域住民と話し合った上で住民が納得の行く形で施策を進めるべきであり、これをスタート地点にしてより良い街づくりを目指すべきではないだろうか。地方行政のあり方を京都市には考え直すべきだろう。